「グフ!」
シヴァにどつかれ、目を覚ます。
あたりを見回すと、ここが学校でないことが分かった。
心地いい香りのお香。
一目で高価と分かるインド風の調度品の類。
驚くほど音質の良い、インド風の音楽。わずかに響く「ブーン」という音も聞こえる。
「・・・ここは?」
気付くと隣でカレーを食べているヴィシュヌが、しゃべりだす。
「ここは、ふぃこうていヴィマナ。神々の乗り物。」
「ふぃこうてい?」
ごくん、と口の中のカレーを飲み込み、またしゃべりだす。
「飛行艇。今はアシュビンさん・・・パイロットが運転してるけど、昼間は太陽光で自動運転できる、エコ飛行艇なんだ。まぁ、詳しく知りたいんだったら、この本を読んでね。」
そう言って渡されたブ厚い本の表紙にはポップな字体で、『ヴィマニカ・シャストラ!~~これで君もアシュビンだ!~~ 日本語版』と書かれている。
読んでみようと手を伸ばすと、誰かの手が伸びた。
「ゴン!」
「イテッ!」
シヴァが本を持って、ヴィシュヌの頭を叩いた。
「今はその話じゃねぇだろ!いいか、耳の穴かっぽじってよく聞けよ、最近ベータラの活動が活発化してきやがった。裏でなんかの力が働いてるかもしれねぇ。だから三位一体神が召集されたんだ。」
「はぁ。」
つまり、あの化け物が誰かの力でまとまった、ということか?
まだ良く分からないのに、どんどん話される。
改めて二人を見てみる。
シヴァは黒髪黒目、ロングヘアー。パーマもかけてなく、スケ番みたいな感じだ。ジーンズにパンクなTシャツ、
ワイルドなパーカー。
ヴィシュヌは自然な茶髪で、染めたのではないだろう。きっと、地毛だ。目は黒目。いたって普通の無地の茶色い長袖、黄土色に緑を足したような色の長ズボン。
俺は、普通の髪の毛、普通の目、学校の制服。ファッションしてるような部分といえば、腕時計くらいだ。
腕時計?ヤバッ!
あわてて時計を見る。短い針が1と2のぴったり真ん中を指していた。
「あぁ~~!」
飛行艇ヴィマナの中で、うるさい俺の叫びが響いた。
シヴァにうるさいと、どつかれた。本日2回目だ。ため息とともに、自分の正体も、あの化け物も、何もかも忘れたように、時計の針のことしか頭に無かった。
こうしてヴィマナの夜は更けていく。
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