ヴィシュヌの言ってた蓮華槍は、蓮には見えなかった。
先端の刃は桃色で、波の様な模様がある。
青緑の柄は長く、エンブレムの様な物体が付いている。
ヴェータラは目を大きく開けたままうなり声を上げ、こちらに突進してきた。
軽いステップでよけたヴィシュヌ。そのままベータラは、こちらに襲ってきた。
ぶつかる・・・
「ドガッ」
鈍い音がして、吹っ飛ぶベータラ。どうやら、ヴィシュヌが結界を張ってくれたらしい。それをベータラは悟り、またもやヴィシュヌに突進してきた。ヴィシュヌは、ニヤニヤ笑いながら、立ったままだ。
突然、ベータラが斜め後ろに吹っ飛んだ。
「言っただろ?僕の殺し方は、一番苦痛を伴う。」
指輪を見せるような仕草で手を上に軽く上げる。
見ると、手首の周りに、拳位の大きさの薄緑の玉がくるくると舞っていた。
「これは僕の結界。ベータラの低い視力じゃ、見えないね。結界は、発動者の意のままに動き、ある一定の力や指定された攻撃をするか、発動者が崩そうと思わない限り、崩れない。」
そうか・・・そういうことか・・・
俺は感心した。今のは、ベータラを殴ったんだ。それも、結界で。
ベータラは、右へ左へとやってくる結界に対処できない。
「ただ殴るだけが、僕の戦いじゃない。今から君に命令しよう。」
ベータラを指で指し、一言呟いた。
「動くな。」
突然、ベータラは動きを止めた。なんだ?
「来てもいいよ。合図するまでね。」
恐る恐る近寄ってみた。
ベータラの全ての関節に、球状の結界が、肉を挟んでくっついてる。
「こうすることで、こいつの関節を動けなくすることが出来る。つまり、動けない。」
「グアアアア!」
ベータラが叫びだした。
「まずいな、手を抜いたから破られそうだ。案外こいつ力強いな。ごめん、もう戻って。」
走って逃げる俺とは対照的に、ゆっくり歩くシヴァ。
「よし、二人とも戻ったね。」
そうすると、いきなり呟きだした。
「オーム、〇△◇エン☆〇セル△×・・・」
半分以上なんて言ってるか分からない。
いきなり、蓮華槍のエンブレムが輝きだした。
チラリとそれに目をやると、結界を破壊し走り出したベータラに向かって、槍を突き刺した。
「蓮華開花」
その瞬間、蓮を模したというその言葉を間違いでないと悟った。
刃が開き、いくつもの花びらに変わった。そう、刃は蓮の蕾だったのだ。
満開の蓮はベータラを裂き、桃色の花びらを真っ赤な血で染めあげた。
「散れ、愚かな餓鬼よ」
その一言と共に、ベータラの体は塵と化した。
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