さっきの戦いが真実と分かる手がかりは空中に漂う塵のみ。
戦いの証拠は風で吹き飛んだ。
「さぁ、戻ろうか。荷物はヴィマナに置いてあるしね。」
心臓の音が聞こえる。
・・・・・・もしあの戦いが負けていたら、どうなるだろう。
「さよなら」も言えず、友達を、親を、残して死んでいく。
俺は膝を突いた。
「嫌だ!戦いなんてごめんだ!僕は生きる!普通の生活をして、生き残る!」
もういやだ。僕はヴィシュヌやシヴァのように強いわけでもない。
ヴィシュヌがベータラの突進を避けるとき、どちらの動きも見えなかった。二人は、あまりにも速すぎた。
俺はあんなに速く動けない。粘土だって使い方もまだ分からないし、「維持神」、つまり守りの神様でさえあんなに速く動いた。これが「破壊神」シヴァだったら、もっと速いだろう。
死ぬ。俺はきっと死ぬ。
いきなり目の前に黒い影が現れた。
「ベチッ!」
ものすごいビンタを食らった。
「アホか!あたし達は生き残る!戦いは必要なんだ!甘ったれんな!」
「俺は弱い!君達みたいに強くない!戦ったところで俺は死ぬんだ!」
「いいか、よく聞け!お前はこの世界に必要な存在なんだ!弱いと思うなら鍛えればいい!」
「勝手にか!勝手に戦死の可能性のゴタゴタに巻き込んで、なんだ?鍛えれ?冗談じゃない!」
「僕だって戦うのは嫌だよ!」
ビシュヌが叫んだ。
「シヴァだって、僕だって、戦うのは嫌だ!だけどそれから逃げられないんだ!きちんと向き合わなければならないんだ!」
ヴィシュヌは服を脱ぎ、背中を見せてくれた。
そこにあったのは、とても大きな傷跡だった。
「これは始めて戦ったとき、出来た傷だ。誰だって始めは弱いさ!それでもいつかは強くなる!」
いつかは強くなる・・・
なぜか意外に感じた。当たり前の事なのに。
そうだ、いつかは強くなる・・・
「もう帰ろう、シヴァ。ブラフマー。」
「うん。」
頬に小さなきらめく涙を拭い去り、俺は歩き出した。
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