星を見るのが好きだ。星はどんな悪人にも、どんな善人にも平等に輝く。
悲しい日も、嬉しい日も同じように輝く。
「なあ富良野、クリスマス暇か?」
「…多分。」
「じゃあ遊ぼうぜ。俺以外にも何人か来るし。」
声を掛けてきたのは二組の健太だ。
「遊べたら遊ぶ。」
「おおし、分かった。お前彼女いないよな?」
「いない。何で?」
「いや、いるなら連れてこいって言おうとしたんだよ。ま、良く考えれば
暗い富良野には創れねえよな。ハハハ。」
失礼だが、その通りだ。
確かに俺はきっと暗い。
それに、顔はとびきりのハンサムなんて言えないから、あまり女は寄ってこない、と健太は言う。
失礼だが、確かに合ってはいる。否定のしようがないので、俺は軽く愛想笑いをしておいた。
今日言われた事を思い出した。暗い…
確かに、それは駄目だ。
なんといっても、もうすぐクリスマスシーズンだからな。
変わらなきゃ。
心の何処かでそう思っていた。
雪の降り積もる朝、おかしな人と会った。
若い18歳くらいの男の人なのだがペット?を連れている。それは…
「鹿ですか?」
「いえ、こいつらはトナカイです。ポチ、タマ、タロウ、ミケです。」
何故その名前?と思ったが、あえて言わないでおいた。
「こいつら、大事なパートナーなんですよ~。」
「パートナー?」
「ええ、何かは言えませんが、仕事のパートナーなんです。」
「はあ。」
「…あなた、もしかして体調が悪いのですか?」
「え?いえ。どうしてですか?」
「…あかの他人に言うのもあれなんですが、何か暗いですよ。笑った方が幸せです。」
そして、彼はにっこりと笑った。
次の日、ヴィシュヌに話し掛けられた。
「ねえ創、クリスマスどうするの?」
「特に予定はないけどなあ…多分友達と遊ぶ。」
「…そっか。」
そう言って、ヴィシュヌは少し寂しそうに笑った。
クリスマスイヴ、屋上に登って、星を見ていた。
やっぱり星は綺麗だ。
「あれ?」
思わず変な声をあげてしまった。いつもの星空の中、見ない赤と茶色の星を見た。…動いている?
そして、気付いた。こっちに向かってくる!
腰を抜かし、ぺたん、とコンクリートに尻餅をついた。
シャンシャンシャンシャン…不思議で綺麗な音がする。
それが近付いて、驚いた。あの人は…
「また会いましたね。ほら、仕事のパートナーといったでしょう。ポチ、タマ、タロウ、ミケは。アハハハ。」
ぽかーんとしている俺に、彼はこう言った。
「ほら、笑って!聖なる夜なんだから!メリークリスマス!」
始めての経験に、奇跡の記念に、彼に向かってくる大きく叫んだ。
「メリークリスマス、サンタさん!!」
「なんだ今日、富良野えらく明るいじゃん。」
「ああ、まあね。」
そう言ってでた笑いは、紛れもなく愛想笑いではなく本当の笑顔だった。
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