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「創」
頭の中でグルグルとその一文字が跳ね回る。
「普通にいたよ」
ヴィシュヌの言葉を再び思い出した。
なんとなく、本当になんとなくだけど、こう感じた。
「俺の知らない何かを、二人は知ってる。」
ポケットに手を突っ込んで、ゴッズクレイを軽く握り締めた。
「グフ!」
帰り道、シヴァに背中をどつかれて、情けない声を上げる。
「なに辛気臭ぇ顔してんだよ!」
「ごめん、創!」
ヴィシュヌが後からやってくる。
「いや、いい。それよりヴィシュ・・・グホ!」
今度はヴィシュヌにどつかれた。
小声でヴィシュヌがまた話し出す。
「ここでは衛って呼んで。変に思われる。」
立ち上がって、俺はまた話し出した。
「ヴィシュヌ。お前の親は死んだのか?失踪したのか?」
「・・・どうしたの、急に?」
ヴィシュヌの目つきが険しくなる。
「お前は、他の神様に名前をつけてもらったといったよな。
だから、維持神で衛、破壊神で武器の弓を名前に入れた弓子。
そして創造神の創。俺だけが偶然なら、出来すぎだ。
俺の親が俺の名前をつけたのであれば、俺の親は何かを知ってるんじゃあないか?
まえに、お前が言ったよな。親はいたって。いた?つまり今はいないってことか?だからヴィマナで生活してるんだろ。シヴァもヴィマナで生活をしてるんだろ?」
こくり、とシヴァがうなずく。
「つまりシヴァも親がいないんだな?
奇妙な名前の一致や親がいない、という事を踏まえて考えると、これは俺の親にも当てはまるのか?」
誰も答えない。
「なぁ、答えろよ!答えろ!」
真っ先に口を開いたのは、ヴィシュヌだった。
「創、君はギリシャ神話のパンドラの箱を知ってる?」
「生憎、おれは神話に興味は無い。」
ヴィシュヌは話し始める。
「神様から開けてはならないと言われた箱を神様に渡されたパンドラという女性は、気になって開けてしまうんだ。すると中からは絶望や病といった人を不幸にするものが飛び出していった。それを、箱の中にはもう戻せない。君は真実という名のパンドラの箱を開けるかい?飛び出した悲しみはもう戻せないよ?」
そういうと、ヴィシュヌは歩き出した。
「じゃあな。箱は開けるなよ。」
そういって、シヴァは歩き出した。
帰り道に俺は取り残された。
冷たいコンクリートのビルが、俺を見下していた。